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ゴミを野菜に交換できる!?市民にリサイクル意識を植え付けた「緑との交換」(ブラジル・クリチバ)
ブラジル・クリチバ市は、南部にあるパラナ州の州都で、サンパウロから飛行機で1時間ほどの距離に位置する、人口約170万人の都市です。優れた都市計画と環境政策で世界的に有名となりました。
1980年代後半、クリチバ市は増え続けるごみの対策として、再生可能ごみの分別収集を始めました。当時のブラジルでは、ごみの分別収集という考えがほとんど皆無に等しく、「できるわけがない」と自国人から批判される状況でした。しかし、クリチバ市は、「ごみではないごみ」プログラムとして分別収集へのさまざまな意識啓発活動を推進。特に小学校を中心に環境教育を実践したことで、家庭の中で子どもがごみ分別の指導を行うようになり、大きな成果を上げていきました。
しかし、市内の低所得者家族の多い地域については、分別量がかなり低く、意識も低いことが調査で分かりました。
そこで1991年に開始したのが「緑との交換」プログラムです。ごみ収集車が回収に行く際、紙や空き缶やプラスチックなどのリサイクルごみをもっていけば、野菜などの食料と交換できるようにしました。ごみと野菜の交換比率は重量で4対1。ごみを4キロもっていけば、1キロの野菜と交換してもらえます。交換する野菜は低価格な季節の野菜などを市として購入。例えば8月ではオレンジ、カリフラワー、キャベツ、にんじん、豆乳などと交換してもらえます。
この政策は低所得者への生活支援となるとともに、リサイクルごみは資源として価値があるということを理解しやすくなり、ごみ分別に大きな効果を発揮しました。
クリチバ市では、集団不法侵入者によるスラム地域の問題がありました。密集しているため道路もなく、ごみ収集トラックが入れない状況でした。ごみは住居近くにたまり、幼児死亡率が非常に高くなっていました。また市の水源地の河川敷を不法占拠していた地域もあり、衛生面、環境面で問題となっていました。
市は住民に対してごみをトラックが入れるところまで持ってくれば、ごみを買って野菜や果物で支払うという「ごみ買い」プログラムを実施しました。
住民がゴミ収集の仕事をしたことに、清掃業者が対価を食料で払うという仕組みにしたのです。スラム地域のごみは見違えるほど少なくなりました。
野菜の購入費とリサイクル製品の売上金の差額は、市の負担になりますが、リサイクルによるゴミの減量で埋め立て地が満杯になるまでの期間が長くなる上、人々がごみ回収によって自ら街をきれいにしてくれるため、市の清掃費も減り、市財政にもプラスの効果になっています。
クリチバ市は、この事業で1990年に国連環境計画賞を受賞し、92年にリオデジャネイロで開かれた環境サミットでもこうした環境保全プログラムが注目され、表彰を受けました。
※展示会場では、他3都市の取り組みが紹介されています。
写真提供
PREFEITURA MUNICIPAL DE CURITIBA
(クリチバ市)
SECRETARIA MUNICIPAL DE COMUNICAÇÃO SOCIAL
(同市ソーシャル・コミュニケーション局)